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みちびき初号機後継機の打ち上げに寄せて

2018年の4機体制の「みちびき」のフル稼働開始から3年、内閣府の準天頂衛星システムの事業推進委員会の委員長として、この世界に誇るシステムの確実な運用と利用の拡大に努めてまいりました。GPS単独では実現できない高精度測位と災害時の双方向通信のサービスが、社会のインフラとして徐々に定着しつつあると感じています。現代社会において、高精度な位置と時刻の提供はまさに社会の「神経網」として欠くことのできないインフラです。それをより確実なものとすべく、今回、このシステムの先駆けとなった初号機の後継機が打ち上げられようとしています。打ち上げと衛星運用の成功を祈念するとともに、準天頂衛星システムがますます社会に定着し、多くの方が、ビジネスを始め様々な用途にこのシステムを使っていただけることを心より期待しております。

中須賀真一教授中須賀 真一(なかすか・しんいち)
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授

[プロフィール]
超小型衛星や航法誘導制御の研究開発を行い、世界初の1㎏衛星の打ち上げ成功を皮切りに13機の衛星開発・打ち上げに成功。
内閣府の宇宙政策委員、基本政策部会長、準天頂衛星システム事業推進委員長、静止気象衛星に関する懇談会座長などを兼務。



日本の準天頂衛星「みちびき」初号機後継機の打上げによる持続測位に期待!!

2010年9月11日、日本初の国産測位衛星である準天頂衛星「みちびき」初号機が打ち上げられて早10年余り、ついにその後継機が打ち上げられます。これは、準天頂衛星システムが今後も継続・持続していく上で大きなマイルストーンになります。高精度測位に、防災・減災に、またアジア・オセアニア地域への国際貢献に、広く、広く利用されていくことを期待してやみません。ただ、大学で講義担当している学生に聞きましても、準天頂衛星システム「みちびき」の日本における知名度はまだまだ低いことも事実です。みちびき初号機後継機の打上げを機に、受講した学生には衛星測位、準天頂衛星システムについて、よりしっかりした知識を身につけて卒業してもらうよう、決意を新たにしています。

浪江 宏宗氏浪江 宏宗(なみえ・ひろむね)
防衛大学校 電気電子工学科 防衛教官
測位航法学会 理事/日本航海学会 理事
(GPS/GNSS研究会 代表幹事)

[プロフィール]
1994年より衛星測位の高精度化、広域利用を推進。
静止衛星Superbirdの通信回線を使用した放送型ネットワークRTK測位実験に成功。
内閣府 準天頂衛星システム事業推進委員会 構成員。



おつかれさまでした、「みちびき」

2010年9月11日夜、みちびき初号機を載せたH-IIAロケットが種子島宇宙センター から打ち上げられ、雲一つない夜空に星のような点になるまで見えていたことを 思い出します。あれから11年、日本版GPSの最初の衛星は、さまざまな実験の後 に実用システムの一部になり、しっかりと役目を果たしてくれました。それまで 本格的な衛星航法の経験がなかった日本にとって、きわめて重要な衛星だったと 思います。その後継機は、初号機での経験をもとに改良され、より高性能で使い やすいシステムを目指しているのは言うまでもありません。打上げが成功し、準 天頂衛星システムという社会インフラがさらに強化されることを期待しています。

坂井 丈泰氏坂井 丈泰(さかい・たけやす)
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 上席研究員

[プロフィール]
衛星航法システムの航空応用に関する研究開発を行い、「みちびき」プロジェクトには当初から参加して実験信号L1-SAIFの開発を担当した。
内閣府・準天頂衛星システム事業推進委員、測位技術振興会理事、東京海洋大学客員准教授など。



みちびき初号機後継機の打上げで更なる時空間情報の利活用促進に期待

準天頂軌道は1972年に郵政省電波研究所(現 国立研究開発法人情報通信研究機構)が世界で初めて提案した、中緯度地域での高仰角衛星サービスが提供可能な衛星軌道です。その有効性は2010年に打上げられた「みちびき」初号機によって通信測位衛星として軌道上実証されました。その初号機が当初の実証目的を全うし、さらに実用サービスに投入され、ついに衛星寿命を迎えることになりました。その後継機が打上げられ、実用サービスが更に充実することは、今後の高度なデジタル社会の基盤となる時刻、空間情報の高度利活用に大きく貢献するものと期待しています。私は準天頂衛星事業推進委員会の委員として参画しておりますが、本事業が我が国の産業基盤の強化に大きく役立つことを期待しております。

門脇 直人門脇 直人(かどわき・なおと)
国立研究開発法人情報通信研究機構 理事

[プロフィール]
1986年に郵政省電波研究所に入所以来、衛星通信技術の研究開発に30年以上従事。移動体衛星通信、ブロードバンド衛星ネットワークなどの研究を行ない、超高速インターネット衛星きずなの開発を主導するなど、多くの実験用通信衛星の開発、実験を実施。



みちびき後継機打ち上げに寄せる

「いつ(時間情報)、どこ(位置情報)」は私たちの生活を豊かにする原動力になってきた。私たちは、生産・消費・分析・予測など様々な局面で、「いつ、どこ」に頼っている。なぜならば、「時」の移り変わりと「場」の移り変わりによって、物事を判断するのが人間だからである。太古、人間は北極星や星座などを用い、「いつ、どこ」を把握した。現在では、測位衛星により、それを把握する。日本は、従来、アメリカなどのGPS衛星を活用してきたが、レジリエンスな社会基盤として準天頂衛星システムを構築し、最大6cmの位置と、10億分の1秒という時間の提供を行っている。そしてこの度、後継機が打ち上げられる。社会基盤において後継が生まれるという事は、それだけ社会の中に準天頂衛星システムが定着したという事を表わしている。「みちびき」の元になった「導く」は「道引く」であり、「望ましい方向に行かせる」意味を持つ。私たちは、この社会基盤をより活用し、社会を一層望ましい方向に導いていかなくてはならない。

坂下哲也坂下哲也(さかした・てつや)
(一財)日本情報経済社会推進協会 常務理事
準天頂衛星システム事業推進委員、JAXA経済産業部会長